直島旅館ろ霞 Light of Butterfly

OUTLINE

瀬戸内国際芸術祭の舞台となる直島に開業した、直島旅館「ろ霞」の庭園での夜間の光のインスタレーション「Light of Butterfly」のアート制作を担当。またこの光と共鳴する音としてサウンドアーティストのevala氏へコラボーレーションを依頼。サウンドアート「Grass Calls - roka ver」の制作をプロデュースさせていただきました。

静かな島の山間に佇む旅館「ろ霞」は人工の明かりに邪魔されることなく、庭園の夜には真っ暗な闇と静けさがあります。
Light of Butterfly の幽かな光と Grass Calls の幻想的な音は空の星と共に庭園中に広がり、
どこまでも続くような不思議な空間をつくり出します。

Light of Butterfly

▼ステートメント
「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす」というように一見何の関係もないような現象が、すべて関連性を持つことを表す“バタフライエフェクト”。本作は小さな出来事が、連鎖反応を起こし、徐々に大きな現象へと影響を与えるという意味で用いられるこの言葉の持つ概念を捉え直し、人間と自然と、またはそれらを超えた「万物すべての生命とその関係性」を描くことを試みた作品である。

日本には古来から、生きとし生きるもの全てに生命があるという考え方がある。動物や昆虫は勿論、川も木も葉にも石ころにも、小さな米粒にもいのちが宿る。この世界観を現代に拡張するならば、AIやバイオ技術など、テクノロジーによって生み出される存在もまた、新しい「生命」としてとらえることができる。

本作は、万物の混合と調和こそ、最も尊いとする日本の持つ美意識と自然観を下敷きに、一つひとつの小さな光を世界を彩る多様な生命に見立て、その関係性を描く。それは、世界各地で起こる些細な出来事や環境変化のデータをインプットとして活用し、「温かな生命」として光のアウトプットされる。つまり、世界の全く無関係な出来事や現象がここ直島で作品と接続され、作品の変化に影響を及ぼすのだ。

また招聘作家のevalaが作り出す、直島や世界各地でフィールド・レコーディングした音源を用いて多層的に構築されたサウンドインスタレーション「Grass Calls」は、聴く者の内面にそれぞれの新しい景色を立ち上げる。植物のざわめきや鳥のさえずりなど周囲の自然そのものの音や、ミニマムな光と融け合うことで、新しい感情や知覚が立ち上がり現実と幻想の境界を曖昧にする。

これらの光と音は、一つの中心を作るのではなく、あるときは一つひとつが分散的に存在し、あるときは共振し、融け合い響き合う。「ミクロとマクロ」「いまとここ」「個と共」を超えた、はじまりも終わりも無い、万物すべての混合と融合から生まれる“生命の循環”を描き出す。

evala (See by Your Ears)
Grass Calls - roka ver

▼Grass Calls
サウンドアーティストevalaが主宰する、新たな聴覚体験を創出するプロジェクト”See by Your Ears”の屋外作品シリーズ。evalaがこれまで世界各地でフィールドレコーディングした時間も場所も異なる音や、展示環境で集音したサウンドを用いて空間的に作曲し、音による ”見えない建築” をつくる試みである。

2020年12月に東京銀座にあるGINZA SIXの屋上庭園にて初出展。人々が賑わう真冬の都会に、庭園自体の造作は何も変えることなく、立体音響による幻想的な架空の熱帯雨林を作り出した。今作では直島ろ霞の庭園空間を舞台に、直島の録音を加えて再構成したシリーズ特別作品を展示している。（今作はステレオ2chでの展示）

耳をすますことによって、発せられるイメージ。evalaが”See by Your Ears” で目指すものは、人々の内側から発せられたそれぞれに異なる物語を、丁寧に引き出すことである。外部から意味や情報を与えるのではなく、人間が本来もつ音への知覚をひらくことによって。

▼evala プロフィール
音楽家、サウンドアーティスト。
新たな聴覚体験を創出するプロジェクト「See by Your Ears」主宰。立体音響システムを駆使し、独自の“空間的作曲”によって先鋭的な作品を国内外で発表。音が生き物のように躍動的にふるまう現象を構築する。近作として、2020年に完全な暗闇の中で体験する音だけの映画、インビジブル・シネマ『Sea, See, She - まだ見ぬ君へ』をスパイラルホール（東京・表参道）にて世界初上映し、第24回文化庁メディア芸術祭アート部門にて優秀賞を受賞。2021年1月にリリースした空間音響アルバム『聴象発景 in Rittor Base – HPL ver』が、国際賞プリ・アルスエレクトロニカ2021 Digital Musics & Sound Art部門において栄誉賞を受賞。

また公共空間、舞台、映画などにおいて、先端テクノロジーを用いた独創的なサウンドプロデュースを手掛けている。
大阪芸術大学音楽学科・客員教授。

https://evala.jp

https://seebyyourears.jp